作品としては著者を存じ上げないが、若いころからジュブナイルポルノやライトノベルで活躍し、現在は官能小説を書く作家でいらっしゃるようだ。
女性だから、出版業界で経験がないからと編集者になめられ、支払いも平気で踏み倒された新人時代。だが著者はあきらめず、手探りで少額訴訟の道を開き、大部分の金額をとりもどした。知識が不足していたため、延滞料や手数料をもう少し増やして請求することもできたとのちに知ったが、訴訟を経験したことが精神的な強みにもなった。
だめな出版社(または編集者)とのエピソード紹介や、これこれのレベルまで売れてきたら税理士を頼んだほうがいいといった実務的な内容がたくさん盛りこまれている。文章の軽妙で読みやすい。
いろいろな苦難はあれど、あきらめないことが第一だと、これからの作家にエールを送る。同年代、同時期に作家活動をしていたはずの人々が周囲にもはやいなくなってしまったが、その人たちに才能がなかったわけではなく、自分はあきらめずに書きつづけたからだと、読み手をはげます。
文筆業、フリーランスの方々は、読んでみて損はない本。
ただ、読みづらかった部分もある。
これはいったいどういったメディアに紹介されたものなのか不明だが、もしや連載されたのだろうか。文章表現にくり返しが多く、ほんの少し前に書いたばかりなのにまた説明をするのかといった、不自然さがあった。連載などの事情で内容が小刻みにくり返されていたものを、そのまま電子書籍にしたのかもしれない。その点だけは読みづらかった。