本書によると、猟の解禁は11月15日のようである(注:都道府県の判断により異なる場合がある)。なるほど、いまが旬の話題というわけだ。アクセス増加の謎がひとつ解けた。
著者は幼少時から動物や自然に大いなる関心をいだいていたが、大学受験の直前に獣医の志望を変更した。浪人ののち京都の大学に進学しながらも、海外でボランティアなどを経験しながら在学可能なぎりぎりの年数まで、まとめて休学をしていたという。その間、生活のためのアルバイト先で猟をしている方々と親交をもち、銃ではなくワナ猟をはじめることになる。ほどなく、登録する猟友会を探す過程で網猟(網で鳥獣を捕獲)の方々とも知り合い、どちらも学ぶようになった。
自身の半生(といっても74年生まれなのでお若い)をからめた、兼業猟師としての歩みだしが、生き生きとしたきめ細やかな描写でつづられていく。カラーでの解体画像、実際に食しているレシピも掲載。そして狩猟期以外に楽しんでいる川釣りや海での漁(関係各所に届け出を出す)にも、話題が及ぶ。
大学の寮を出たのちに、かつてペット納骨堂として利用され、その後は老婦人が暮らしていた山ぎわの建物を、格安で借りて住居とした著者。本来は住居として紹介できない物件であったところを、解体に便利な広いスペースが確保できるという理由で選び、トイレや風呂などの水回りも少しずつ自身の手でリフォームしながら整えていったという。解体手伝いも兼ねた試食の参加者、影響されて輪がひろがっていく若手猟師の集まりが繰りひろげられたその家の裏山は自然があふれ、引っ越し直後でさえ、家のすぐ近くにシカやイノシシの気配も感じられた。のちにそのイノシシを倒すことにも成功。
猟、山、自然というものへの世間の考えや理解は、かならずしもよいものではなく、誤解もある。その点は「女猟師」の際に感じたこととまったく同じだ。
この手の本は、もっともっと、増えるべきであると思う。啓蒙といっては大げさかもしれないが、人がもっと山を知ることで、いろいろな問題を見直すきっかけになるように感じている。
文庫本あとがきによると、著者はその後に結婚され、現在はお子さんもいらっしゃる由。猟や解体に割く時間は制限されているが、これからも兼業で猟をつづけていくという。