2013年05月11日

女猟師 わたしが猟師になったワケ - 田中康弘

 人には、出会いがある。本とも、出会いがある。

 初めての書店の本棚で、たった数分後に、この本が目に飛びこんできた。周囲にあるのは平積みばかりで、これは1冊。誰かが棚から出して読もうとしたのか、ちょっと斜めにポンとおかれていた。仲間から離れて気の毒な気がしたため、もとの場所を探してあげようと手にとったら、おもしろかった。即買い。



 本書は5人の女性猟師に取材し、その猟に同行し捌く場所までをも画像とともに紹介した本である。猟で生計を立てる人がいるのか、しかも女性の体力で大丈夫なのかと思うが、取材対象になった方々だけでも5人いらっしゃる。正直、驚いた。男性も含めると、都道府県によっては専業猟師がいる地域もあるとのこと。もっとも、猟が認められている季節は1年のうち4ヶ月なので、猟の期間だけで生計を立てるほどには、食肉や毛皮の需要は、高くないようだ。ジビエ(野生の鳥獣の肉)がグルメな人々に愛好される時代とはいえ、毛皮や熊の漢方薬は需要が落ちてきているとのこと。

 猟師の家庭や猟をしている人々に囲まれて自然と女性猟師になったという人は少なく(4人目の吉井さんのみ)、ほとんどの方々は害獣駆除の必要に迫られたり、山に魅せられる出会いがあったのち猟への道が開けたり、あるいは自分で獲ったものを味わいたいと考えたなど、さまざまな理由から、生活の一部として猟をおこなっている。

 長野県、石川県、兵庫県、大分県と、彼女たちの地域は異なるが、食肉の文化が他より浸透している関西(この場合では兵庫県)には、職業猟師が複数いらっしゃるそうである。いっぽう、著者がかつて取材して親交の深い秋田県阿仁町のマタギには職業猟師(専業マタギ)はおらず、みなさん兼業だそうだ。わたしも含め一般の人のイメージでは、いかにも秋田にこそ専業マタギがいそう…ではないだろうか。

 集団でおこなう猟の方法(3人目の安本さんは単独の山歩き)、用語、猟犬の活躍など、解体までも含めて写真も豊富で飽きさせない。

 あまり知られていない職業について知りたい人は、ぜひ。

 猟に関しては、店に行けば肉があるのにわざわざ生きているものを殺すのかという意見や嫌がらせの言葉が、個人や地域に届くことがあるそうで、残念に思った。林業もそうなのだが、木を切るとよくない、自然が破壊されるといった単純な思いこみもある(本書でも同様の話が紹介されていたが、わたしも関心があった)。

 広大な原生林ならまだしも、人里に近い山は、近代になって人が管理するようになったものだ。植えて、整理して、あいだの木々を切って風通しをよくし、日を当てて、地面を健康にしておくことが必要。そうでなければ暗すぎて生きものも住めないし、地面が弱ってしまう。土砂崩れも起きやすくなる。適度に人が管理して、生きものとの共存を考えてこその山だ。放置しておいて環境によいはずがない。

 猟関係の団体の中には、このような取材を受けて、出版されて、嫌がらせがあったらどうしようという心配があるかもしれない。だが黙っていては人は知らないままで、誰もわかってくれない。これからも、いろいろな折に触れて、猟について知っていきたいと思うし、その機会が増えていくことを祈っている。
posted by mikimarche at 16:20| Comment(0) | 実用(暮らし)
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