ほぼ同時期に「しば漬け食べたい」のCMに出たとき、よく似た人がいるものだと、本人とは思わなかったほどだ。だがその後も多くのテレビ番組で芸能人としての才覚を発揮していった。
女ひとりで親を看取る / 山口美江
バイリンガルのニュースキャスターでありながら芸能人をしているということに、「天は二物を与えず」というが才能がこんなにある人もいるのだと、驚いたものだった。
その著者が2012年に自宅でひとり亡くなった。その少し前に、父親がアルツハイマーで徘徊をしていたこと、苦労していたことをテレビで語っていたのを覚えているが、ご本人に病気があるようにも感じられなかったため、訃報は突然だった。
本書は、2004年ころから少しずつ様子が変わっていった父親が、2005年の数ヶ月間でアルツハイマーを劇的に悪化させ緊急入院、さらに2006年に入院先で亡くなるまでを綴ったものだ。
わたし自身がアルツハイマー型認知症の義母と8年の同居を経験しているため、自分にとっては馴染みの描写(ホラー体験のような「あるある」)もあったが−−。年数は長くともひとりではなかったわたしと違い、著者は数ヶ月とはいえたったひとりで、「タクシーまで駆使してしまう徘徊」に対応していた。どれほどのご苦労だっただろうか。
文体は軽妙で、生前の人柄そのままだ。
もっと長く、生きていただきたかった。