2022年08月26日

マリオネットの罠 - 赤川次郎

 初出が1977年だという、赤川次郎の初期作品。それ以前は放送作家として脚本を書いていたとも聞いているが、80年代以降の数々の作品は、量も質も記憶にある方が多いかと思う。映像化された作品も多い。

 今回は先日の物騒な事件(15歳の少女がナイフで人を刺す)に影響されてか、この作品のタイトルが以前よりも多くネットで流れているように感じて「ああ、そういえば読んでいないかもしれない」と気づいて、Kindleでダウンロードした。

 評判として「最後にびっくり」というコメントが多いことと、映像化されていない(おそらく)こととで、わたしとしては「映像化しにくい作品で、最後にびっくりするとなれば、こんな人が犯人に違いない」という予測を立てて読んでいたのだが−−見事に、違った。うれしい誤算だった。

(画像はAmazon Kindle版)


 使用人を除いては女性のみが暮らす資産家の邸宅に、3ヶ月だけ住み込みでフランス語を教えるという仕事を得た男性。結婚前の資金の足しにでもと快諾するが、なんとも奇妙な家で、地下室にはその家の三女が幽閉されていた−−。

 最後のほうで驚くことを楽しみに読む人が多いかと思うので、ネタバレにならないように、周辺のことを書く。

 出てくる女性は二十歳前後が多いのだが、男性視点で表現される場所では、それらが「少女」とされている。当時はこれでも違和感がなかったのか。もちろん女性目線の記述ではないわけだが、男性の場合はわりと若そうな人物でもそれら年代を「少女」と認識するらしい。恐るべし、時代の変化。とくに赤川氏がおっさん視点であるというより、時代なのだろう。

 出てくる人物がかなりステレオタイプ。とくに女性らは、繊細か、知的か、従順か、性的に発展しているかなどのおおざっぱな分類が多い。まあ、これも時代か。

 ここまで書いておいて「おもしろい話でした、ちゃんと騙されました」と書いても信用されないかもしれないが、騙されるかどうかを楽しみの基準にしている人の場合は、けっこうよい作品ではないかと思う。

 映像化されてこなかった理由は「話が突飛」、「登場人物がけっこう浮世離れしていて真面目な作品と感じてもらえない可能性」という、そのふたつに尽きるのだろう。
posted by mikimarche at 22:45| フィクション