2020年06月26日

ザ・プレイ - アリスン・ブレナン著 安藤由紀子訳

 2005年に発表の、著者デビュー作。本作は3部構成となっており、FBIアカデミーでともに過ごした3人の女性たちの、それぞれのその後を描くもの。1作目の本作は、いったんはFBIに勤め功績を残しながらも、ある事件をきっかけに引退して犯罪小説を書くようになったローワン・スミス(33歳)を描く。




 なぜこの本を買ってあったのか失念してしまったが、おそらく当時(数年以上前)に名前を耳にして、どうせ読むならばデビュー作だと思ったのではないかと思う。積んで忘れていたが、読みやすいので1日半で読めた。

 タイトルの「ザ・プレイ」は、追われる獲物の意味である。音で聞くと遊びのほうのプレイと同じだが、こちらはpreyだ。ちなみに神に祈るのもプレイだが、そちらはprayである。

 本作の内容は広い読者層に無難に受けいれられそうな設定になっており(主人公は才色兼備、白人でブロンド)、殺害されるのではと目される彼女を守るのには、関係者が雇った屈強でプロフェッショナルな男たち、そして狙われる理由が過去の捜査にあると踏んだ元FBI上司や同僚の全面バックアップといった、現代版の「姫」である。ただ本人は自衛能力があると強く主張しており、むしろ自分が狙われたほうが犯人が早く特定できると信じているようだ。

 あらすじとしては…
 自分の作品に登場するのと同じ人名の女性が、内容に合った状態で殺害され、現場には著書が残されていた。次の被害を防ぐために犯人の割り出しと狙われそうな女性の特定を急ぐが、本に書かれていないはずの、彼女個人の情報を犯人が知っていることがわかってくる。
 彼女は幼少期に悲惨な事件を体験し、トラウマから立ち直るためにもと、周囲のはからいで名前を変えていた。だが犯人は、ほとんど生きて残っていないはずの知人しか知らない過去を知っていた。いったい誰なのか?

 …というものなのだが、だいたいは、はらはらせずに先が読める。デビュー作にしては安定しているが、欲ばりすぎたのだろうか、性描写が多い。正直「またかよ」である。
 これは3部作であり、2作目以降はわからないが、本作にかぎって言えば「殺人事件が出てくるもののハーレクインロマンス」的なものかもしれない。

 フィクションをあまり読まなくなって久しいが、アメリカの人気作品の多くが、少なくとも1990年代までで考えるならスーパーヒーローに支えられていたと思う。頭がよい、美しい、何でもできる、である。だらしなさや、弱点があまり見られないものが、けっこうあった。最近はどうなのだろうか。

 そろそろ、違ったものも読める時代であると思いたい。
posted by mikimarche at 12:25| Comment(0) | フィクション