起業に関心がある人が参考程度に読む分にはおもしろいかもしれないが、本気で商店街をどうにかしたいと思っている当事者が読むと、希望の持てる内容とは、なっていない。とくに本の最後で、よかれあしかれ商店街の組合そのものが活性化を阻む存在になりかねない危険性が指摘されていることから、へたをすれば腹を立ててしまうかもしれない。
前半では、商店街への自治体からの補助金問題が何度か出てくる。
経済的な発展を遂げることこそが商店街の内部(商店たち)にしても地元にしてもよいことに違いないのだが、役所は補助金を出す立場上、相手の経済状態の向上を目的とすることはできないため、あくまで建前として、地域社会の発展や地元の人びとのための場所作りというものを想定しているとしてきた。
だが時代が下り、担当者が変わったり、字義通りに受けとめる流れができてくると、話が違ってくる。役所側としても商店街側としても、商店街の採算よりも補助金をうまく回らせるためのイベント案を出しては実行するようになり、肝心の商店街の利益がおろそかになることもある、とのこと。
また、商店街としてはほとんど寂れているような場所に、家賃の安さを魅力として若い起業家が店を出し、それが当たったときにも、悲劇が起こる場合がある。その店の周辺が活性化して家賃が上がり、数年後には賃貸契約を更新することが(その地元を流行らせた商店にとってさえ)難しくなる事例もあるそうだ。するといったんはできかけた人の流れが止まり、衰退へと逆戻りすることもある。
うまくいく例があるとすればだが、すべてを総合的に見る立場の人間(タウンマネージャー)を雇い、運営側や地元のニーズを考えた上での商店街構成が必要となる。ただしその場合も、いきなり鳴り物入りでこの人が仕切りますと紹介するのではなく、地元に長い人などの協力をこぎ着けてからにしないと反発も起きやすいとのこと。
著者自身は、最近は商店街などの包括的な相談には乗っておらず、個々の商店のプランニングをしているそうである。現在その立場であるからこそ書けたのかもしれないが、すでに存在している商店街の活性化というのは、かなり難しい仕事なのだろうと、実感させられた。