2019年02月25日

特殊清掃 - 特掃隊長

 このところ思うところあり、ゴミ屋敷や片付けに関心を持っている。本書のタイトルを見てそういう本であろうと予想し、電子書籍版で読んでみた。著者はプロとして片付けをなさっているらしく、ブログで好評だった記事を抜粋の上で掲載した本だという。



 実のところ、ゴミ屋敷のような話はほとんどなくて、多くは事情で人が亡くなった家の片付け(人体の残留液や血液の除去と清掃を含む)であった。それはそれで好きなテーマであるので、読みつづけた。
 怖がらせようという意図でも、一般人はしらないことだろうから知識を与えようという書き方でもなく、ただひたすら作業をこなしながら、著者は自分の頭に浮かんだことをつづっていく。読む側も、頭が下がるなどのありきたりな言葉が浮かぶよりも、まずそのよどみない文字の流れをただひたすら目で追う。
 誰かの日常が急に終わって、その生活の最後の場を片付ける人の日常が、つづられている。それをまた日常の流れの中で誰かが読む。この流れは永遠につづく。川と同じで、はじまりも終わりもなく、大きな水に溶けこんだ無数のしずくがあり、それが永遠につづいていく。

 ときに自嘲的にご自分を表現したり、「おでん(前後編)」のように、読み物としてはらはらしてしまうような場面もあるなど、文体が読みやすいというだけではなく独特の軽快なリズムが心地よく、夢中で読み終えた。

 長い本ではない。だが読み終えてみて、何人分かの時間を経験したような軽い疲れと、洗ってもらったようなすっきりした思いが残った。
posted by mikimarche at 23:05| Comment(0) | 実用(暮らし)

2019年02月23日

いちばんくわしい パン事典 - 監修 東京製菓学校

 ある程度は製パンについて下地ができている人向けの参考書。各国のパンを写真で紹介しながら、分類や使われる酵母の種類、配合(ベーカーズパーセント)を記載する「世界パンの旅」の章が、全体の大きな割合を占める。ヨーロッパ、アジア、中東、ロシア、アメリカなどの有名なパンを解説しながら、日本に関してはより細かく、惣菜パンや甘食にまで言及。これから製パンに親しんでいく人でも、読み物としては楽しめるかと思う。



 その世界めぐりが終わると、次には製パン全体の話として原材料や道具、パン製法(ストレートか、中種かなど)を解説して、本の最後のほうで、パンの楽しみ方や、入手したパンのアレンジ方法(たとえばバゲットがあまったらボストックにするなど)を掲載。

 コンパクトで、よくまとまっている。

 ところどころに有名パン店のパンの画像が具体例として載っているなど、ある意味で広めの読者層を狙ったのではと思われる記述もあるが、わたしは個人的に、それらはなくてよいように感じた。個別のパン店を掲載せずにあっさりと知識としてまとめたほうが、本は長生きする。たとえば掲載したパン店が閉店してしまうなどのことで、ほんの数年後であれ読者に「ああ、この本は古い」と認識させることもじゅうぶんに考えられるのだ。

 わたしは電子書籍版で読んだが、手もとにおいて台所で読む種類の本ではないため、紙である必要はないかと思う。どちらかといえば電子書籍がおすすめ。

 逆に、世界のパンのレシピが具体的に載っているわけではないので、それを期待している人は、本書以外を検討したほうがよいかと思う。
posted by mikimarche at 01:15| Comment(0) | 実用(食べ物・食文化)

2019年02月07日

オカルト・クロニクル - 松閣オルタ

 ロシアで1950年代に大学生9人が不可解な死を遂げたディアトロフ峠事件というものがあるそうで、最近ネットで話題にしている人がいた。検索をしてみたところ本書の著者が運営している同名のサイト「オカルト・クロニクル」が見つかり、いくつかの事件を読んでみると文体は軽快なのにきちんと筋立てて書かれており、なかなかおもしろい。書籍版には書き下ろしの事件もはいっているということで、購入してみた。



 まず最初に読んだのは後半のほうにあったファティマの預言である。幼少時からの聞きかじりで内容を把握しているつもりだったが、なんと預言は月に1回ずつ7回にもおよび、最後の回は大勢の人々が埋め尽くす場所に何らかの光る現象が現れたそうだ。当時にiPhoneがあったらさぞかし素晴らしかっただろうと不謹慎なことを書いてしまうが、こうした多くの人が「知っているつもり」の話にも、丁寧な解説と独自見解がつづられている。

 つづいて読んだのは赤城神社の女性行方不明事件。これは書き下ろしだ。以前に行方不明から数年の段階でテレビ番組「テレビのチカラ」に取り上げられたことがあり、わたしも内容はよく覚えていた。オカルト・クロニクルというタイトルの本に収録されるような意味での事件なのかと、購入前に目次を見て考えたが、本書はいちおう事件の最後に(オカルトやUFOを含む)さまざまな見解を書くのがお約束になっているものの、全体としては不思議な事件を掘り下げて書くスタイルであり、「不思議な事件をまとめた本」というくくりである。関係者からテレビで放映されたリマスター済みのビデオを見せてもらうなど、軽い意味でのブロガーとは一線を画した取材姿勢がすばらしい。

 世間を騒がせた岐阜県の団地におけるポルターガイスト事件など、さまざまな方面からの事件を15件掲載する。いくつかサイト上で読んでみて雰囲気をたしかめてから書籍購入をするのもよいかと思う。

 川口浩探検隊、矢追純一のUFO番組、ユリ・ゲラー、新倉イワオや宜保愛子の番組に染まって成長してきた中高年には、なかなか味わい深い珠玉の一冊となっている。ついでに書くが「うしろの百太郎」は大人になってから集めなおしたほど好きだった。

 ところでわたしがこの本でギョッとしたのは、おそらく著者が予想もしていなかった部分である。著者にとってはあたりまえすぎて、何気なく書いた文章なのだろうが、福島県の便槽で男性の遺体が見つかった事件、そして東電の女性社員の殺人事件にそういう話があるとは、まったく知らなかった。気になる方は検索をしてみるとよいかもしれない。まったく予想しない場所から、自分の知らない世界がひろがっていたことに気づくのもまた、ちょっとした恐怖体験といえるだろう。
posted by mikimarche at 23:30| Comment(0) | 実用(社会・事件)