2023年01月15日

今後はブログmikimarulogで継続します

 以前のブログからこちらに引っ越して数年ですが、こちらはSSLに対応予定がないようですので、今後はメインブログであるmikimarulogで継続します。書籍のカテゴリがそちらにありますので、どうぞご覧ください。

 今後ともよろしくお願いいたします。なお、こちらの内容を消去する予定はありませんのでご安心ください。
posted by mikimarche at 12:35| お知らせ

2022年12月27日

女ひとりで親を看取る - 山口美江

 東京の学校に進学し、英語を極めていつかすごい仕事につきたいと思っていたわたしに、ニュース番組「CNNヘッドライン」のキャスターで有名になった著者は、大きな憧れの存在だった。
 ほぼ同時期に「しば漬け食べたい」のCMに出たとき、よく似た人がいるものだと、本人とは思わなかったほどだ。だがその後も多くのテレビ番組で芸能人としての才覚を発揮していった。

 女ひとりで親を看取る / 山口美江


 バイリンガルのニュースキャスターでありながら芸能人をしているということに、「天は二物を与えず」というが才能がこんなにある人もいるのだと、驚いたものだった。

 その著者が2012年に自宅でひとり亡くなった。その少し前に、父親がアルツハイマーで徘徊をしていたこと、苦労していたことをテレビで語っていたのを覚えているが、ご本人に病気があるようにも感じられなかったため、訃報は突然だった。

 本書は、2004年ころから少しずつ様子が変わっていった父親が、2005年の数ヶ月間でアルツハイマーを劇的に悪化させ緊急入院、さらに2006年に入院先で亡くなるまでを綴ったものだ。

 わたし自身がアルツハイマー型認知症の義母と8年の同居を経験しているため、自分にとっては馴染みの描写(ホラー体験のような「あるある」)もあったが−−。年数は長くともひとりではなかったわたしと違い、著者は数ヶ月とはいえたったひとりで、「タクシーまで駆使してしまう徘徊」に対応していた。どれほどのご苦労だっただろうか。

 文体は軽妙で、生前の人柄そのままだ。

 もっと長く、生きていただきたかった。
posted by mikimarche at 23:55| エッセイ

2022年08月26日

マリオネットの罠 - 赤川次郎

 初出が1977年だという、赤川次郎の初期作品。それ以前は放送作家として脚本を書いていたとも聞いているが、80年代以降の数々の作品は、量も質も記憶にある方が多いかと思う。映像化された作品も多い。

 今回は先日の物騒な事件(15歳の少女がナイフで人を刺す)に影響されてか、この作品のタイトルが以前よりも多くネットで流れているように感じて「ああ、そういえば読んでいないかもしれない」と気づいて、Kindleでダウンロードした。

 評判として「最後にびっくり」というコメントが多いことと、映像化されていない(おそらく)こととで、わたしとしては「映像化しにくい作品で、最後にびっくりするとなれば、こんな人が犯人に違いない」という予測を立てて読んでいたのだが−−見事に、違った。うれしい誤算だった。

(画像はAmazon Kindle版)


 使用人を除いては女性のみが暮らす資産家の邸宅に、3ヶ月だけ住み込みでフランス語を教えるという仕事を得た男性。結婚前の資金の足しにでもと快諾するが、なんとも奇妙な家で、地下室にはその家の三女が幽閉されていた−−。

 最後のほうで驚くことを楽しみに読む人が多いかと思うので、ネタバレにならないように、周辺のことを書く。

 出てくる女性は二十歳前後が多いのだが、男性視点で表現される場所では、それらが「少女」とされている。当時はこれでも違和感がなかったのか。もちろん女性目線の記述ではないわけだが、男性の場合はわりと若そうな人物でもそれら年代を「少女」と認識するらしい。恐るべし、時代の変化。とくに赤川氏がおっさん視点であるというより、時代なのだろう。

 出てくる人物がかなりステレオタイプ。とくに女性らは、繊細か、知的か、従順か、性的に発展しているかなどのおおざっぱな分類が多い。まあ、これも時代か。

 ここまで書いておいて「おもしろい話でした、ちゃんと騙されました」と書いても信用されないかもしれないが、騙されるかどうかを楽しみの基準にしている人の場合は、けっこうよい作品ではないかと思う。

 映像化されてこなかった理由は「話が突飛」、「登場人物がけっこう浮世離れしていて真面目な作品と感じてもらえない可能性」という、そのふたつに尽きるのだろう。
posted by mikimarche at 22:45| フィクション

2022年04月14日

穏やかな死に医療はいらない - 萬田緑平

かつて群馬県の病院で若手外科医として活躍、その後に緩和ケアの診療所に勤め、現在は自身が診療所を運営している萬田医師の著。



 がんであると告知され治療を受けても、たすかる見込みのない人もいる。若くて体力がある人ならば強い抗がん剤の使用で体力が奪われても克服できる場合があるが、ある程度の年齢で、治療の初期に効果がなければ、そこが方向転換を検討するたいせつなチャンス。つらい抗がん剤に苦しむよりも、残る日々を心安らかに生きる選択肢があることを、事例とともに説いていく。
 むろん、医療行為を全否定しているわけではなく、ご本人が何を選ぶかをたいせつにしようという意味である。

 仮に抗がん剤でがんを克服しても、その後の暮らしを生き抜く体力が残されていないならば、身の回りのことが自分でできるかどうかといった生活の質は下がってしまう。適切な時期に、受けるのは最低限の医療だけにする決意をする。自分の人生を少しずつ終わりにしていく準備期間にすることができたら、それがよいのではという内容だ。あくまでご本人と家族に選ばせる。

 必要に応じて訪問看護や家族のサポートを得つつ、自宅や慣れた場所で残された日々を気楽に過ごすことは可能で、だいそれた準備も要らないのだと、事例を説明する。

 そういえば近年、自宅で静かに死期を迎えさせたいと決めていても、本人が苦しみだしたときに家族の心が揺れて、とっさに救急車を呼んでしまうといった話が聞かれる。
 呼ばれた以上は、救急車は病院を探して医療行為をしてもらわなければならないが、苦しそうだったからつい呼んでしまったけれど呼んだのは間違いだったと、家族と救急隊員のあいだでもめてしまう場合があるのだそうだ。以前に新聞でそう読んだ記憶があるし、本書にもそういったご家族の話が書かれていた。

 わたしはまだ、身近な高齢者が病院で死んだ例を知らない。

 父は自宅で突然死だった。義父もどうやらそうだった(同居していた義母が認知症で最後の状況がさからなかったが、おそらく普通に病死だったと思われる)。そして数十年前だが、母方の祖母はずっと患ってから自宅で死んだ。親戚一同が間際に祖母宅に出かけ、わたしも握手などしてお別れした。

 本書を読み、そうか、最近は家で死ぬことのほうが難しいのかもしれないと感じた。仮に本人と同居家族が自宅で看取る心構えをしていても、しばらくぶりに顔を見に来た親戚たちが「こんなに痩せていてどうする、点滴してもらわないと、病院に行かないと」と騒ぐ事例もあるらしい。聞いたことでもあり、本書にもそれが出てくる。
 そしてちょっとした不調の折に病院に出かけ、仮にそのまま入院になれば、体力が落ちたり認知能力に問題が生じて、ますます周囲が病院を勧めてしまう結果にもつながりかねないようだ。

 わたしは、何か大きな病気になることがあれば、病気の名前と、それば直接の死に至るのかどうかの説明はしてもらいたい。家族にもそう告げておこうと思う。
posted by mikimarche at 16:25| Comment(0) | 実用(暮らし)

2021年09月11日

沖縄の怖い話 - 小原猛

 沖縄に移住した著者が、地元の人々から聞いた怖い(!?)話をユーモアたっぷりにつづる本。著者はもともと京都の人らしいが、その軽妙な文体に引きこまれ、「怖い話」というタイトルも忘れて何度も笑ってしまった。



 花粉症の症状緩和のため、沖縄での暮らしを選んだ著者。沖縄でいまも人々の生活に溶けこんでいるユタ(女性シャーマン)の存在や、現地での民間信仰、神様のことに最初は関心がなかった。だがご自分の両親の名前を、名前のよくある誤読も含めて当てられたことで、興味を持つようになる。

 聞きとった話が多く収録され、誰それのところに何が出た、ユタに話を聞いてもらったなどの、怪談では一般的な(?)展開もある。だが、あまりにも登場人物らの描写が生き生きとしているために、笑ってしまうこともしばしば。

 自分の店に女の幽霊が来たので脅してやった、もう来るなと塩を撒いてせいせいしていたら、のちにユタがやってきて、このあいだ亡くなったあんたのお孫さんは、店でかくれんぼがしたかったのに−−やら。

 七章目の「砂場のオジイ」からはじまるオジイ連作は抱腹絶倒。人に迷惑をかけまくって死んだオジイ(幽霊で出てくる)と、その孫のところに出てきていると知った娘が「さんざん迷惑かけやがったのに孫(自分にとって息子)のところに出てきてないで、さっさと成仏しやがれ」と怒りまくる話。娘が怖いので孫のところにばかり相変わらず出るオジイと家族の、笑いなしには読めない話だ。

 夏だからかもしれないが、Kindle Unlimitedの対応作品(定額)だった。購入した場合でも数百円なので、ぜひご一読あれ。
posted by mikimarche at 13:00| Comment(0) | 趣味(その他)